TalkStayは、福井市主催のXSCHOOLというデザインスクールプログラムに参加した際に制作したプロジェクトです。人種の多様化する福井市・越前市に在住している在日外国人、特に技能実習生の方に焦点を当て、彼らの日本での暮らしをもっとサポートできるよう、SNS上のホストファミリーを作れないかという提案を行いました。
地方における在日外国人の数は、技能実習生や、メーカーの工場勤務者という形で増え続けています。日本人の若年層が減り、在日外国人の人口は増えていく地方において、両者が共に生きる仕組みを形作っていくことは喫緊の課題と言えます。
特に福井県の福井・越前エリアは工場労働者とその家族が多く生活しており、通りを歩いていて出会う在日外国人の人の数は、体感値で東京よりも多いと感じました。チームの中で海外生活の経験者が多かったこともあり、チームとしてこの課題に取り組んでいくことに決めました。
調べてみるとみると、統計上で近日人口比率が増えているのは、技能実習生であることが分かり、この部分に焦点を当てて調査をしてみることにしました
実際に現地に足を運び、現地の人曰く、実習生がすごしていることが多いという場所を巡るところからリサーチを始めました。公園やスーパーなどで直接声をかけたりもしてみましたが、英語、日本語、いずれの言語でもコミュニケーションをとることが難しく、当初は情報を得ることが非常に困難でした。
知人のベトナム人留学生を起点に、2年限定で働きに来ている実習生や、エスニック料理店の店主の方などにお話を伺いました。仕事以外の時間の過ごし方を聞くと、スーパーで売られている調味調で地元の料理を再現することにチャレンジしたり、自転車で6km離れた公園までみんなで食材持ってピクニックに行くなど、当初の想像以上に日本での生活をエンジョイしている様子が浮かび上がってきました。
実習生の話をもとに、取り巻く人物の関係をマッピングしました。職場の同僚や同郷の友人と楽しく過ごす反面、職場以外の人たちとはあまり接点がないことが見えてきました。一方で、彼らをサポートする方法を模索している市のダイバーシティー推進室の方も、看板の表記を翻訳する施策や、日本語教育ボランティア施策などを打っているものの、その実態の把握に課題感を感じていました。
実習生を取り巻く人物の関係をマッピングしました。実習生たちにヒアリングすると、職場の同僚や同郷の友人と楽しく過ごす一方で、職場以外の人たちとはあまり接点がないことが見えてきました。市の共生課も、看板の表記を翻訳する施策や、日本語教育ボランティア施策などを打っているものの、その実態の把握に課題感を感じていました。
課題をより明確にするため、越前・福井地域にすむ日本人の方と、市の職員の方、そして実習生の3者に、お互いのことをどう思っているのか、Zoom上で詳しくヒアリングしました。
漠然と日本人と在日外国人の間に接点を持たせたい、と考えていましたが、インタビューを通して3者に共通した興味・関心ごととして、「在日外国人が、福井の地でできること(ケイパビリティ)を増やす」というのが一つ大きなテーマになることが見えてきました。実習生の中には、献血をしたり、避難訓練をしたり、日本人側の想像を飛び越えてやりたいことがたくさんあり、お客さんとしてよりも、社会の乗員として、地域に参加したがっているということが見えてきました。また、彼らを気にかけている地域住民の方もまた、それを望んでいて、手助けしたい、と思っている人は少なくありませんでした。
実習生が日本にいてできること、行動の範囲を広げていけるように、安全性を確保した上で、LINEチャットのような形で気軽に接点の持てるSNSホストファミリーのようなサービスを提案しました。日本でできることの範囲を広げたい外国人実習生と、彼らのサポートしたい日本人をマッチングさせ、「献血どこでやるの?」「この標識どういう意味?」「この調味料どこで買ったの?」と言った日常の小さな困りごとや疑問をチャットで聞きあえるアプリです。
日常生活の小さな疑問や質問、困りごとを聞ける「相方」が存在することで、今まで踏み出せなかった行動が一歩踏み出せ、自分の街として感じられるようになることを目指しました。
実際に最低限のチャット機能とマッチング機能をxcodeで実装し、コンセプトテストに耐えうるプロトタイプを作成しました
ヒアリングさせてもらった実習生の皆さんに、制作したプロトタイプを触ってもらいました。
・ 日本語に自信がないのがコミュニケーションのネックだったので、自動でチャットを翻訳してくれるのは嬉しい
・ 友人経由での招待制でユーザーが増えていくと安心して使える
・ おすすめのレストランを教えてもらったり、料理を教えあったりするのに使いたい
など、ポジティブな反応をもらうことができました。
アプリを実習生の間にリーチさせる方法についても、彼らの暮らしを観察させてもらう中でヒントを模索していきました。
自動車を持たない実習生にとって、メインの交通手段は自転車です。実習生の生活風景を観察していると、自転車の荷台にスーパーでもらった段ボールを載せ、大量の食材を運ぶ風景が多く見られました。
そこで、スーパーで無料で配布している段ボールにアプリのダウンロードQRを載せれば、自転車に載った段ボールが動く広告塔となってアプリの紹介をしてくれるのではないかと考えました